そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
さらに悪いことに、ゼノンの手が腫れている。
先ほど自分に向かって伸ばしてきた右手であることから、それが自分のせいであることは明白であり、ソフィアは「完全に終わった」と両手で頭を抱える。
自分の手をじっと見つめていたゼノンが、突然「ククッ」と笑い声を発した。
見れば、完全に笑みを浮かべていて、ソフィアは唖然とする。
「なるほど、これがお前の光の魔力か。実に面白い」
ゼノンは左手で持っていた書籍二冊をテーブルの上にドスンと投下した後、何が面白いのかわからずポカンとしたソフィアに向かって身を近づける。
「その力を伸ばして、私の力になれ。そうすれば褒美をとらせよう」
にやりと笑って取引を持ちかけてきたゼノンがテーブルに置いた本が光の魔力に関するものだと見て取り、ソフィアはゴクリと唾をのむ。
私の力になれ。
その言葉と、友情ルートで迎える未来の情景が重なり、願ったり叶ったりだとソフィアの口元にも笑みが広がる。
ソフィアはぎゅっとゼノンの右手を掴み取って、意識を集中させる。
光り輝く魔法陣がゼノンの手元にふわりと浮かび上がったあと、手の腫れがすっと引いていく。
「必ずなりましょう! 私がお父様の力に!」
力強くソフィアが言い放ち、治った手を両手でぎゅっと握り締める。すると、ゼノンはわずかに目を見張った後、瞳を輝かせた。
「楽しみにしている」
親から子にかける言葉としては歪だけれど、悲惨な未来を回避するための光明がはっきり見えたほどに、ソフィアにとっては最高のひと言だった。