そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ソフィアが葛藤していると、部屋の扉が開いてハンナがニコニコ顔で入ってきた。
両手で抱えている花瓶には花弁の大きな赤い花が生けられている。
森の中で見かけたことのない花であり、もしかして街に出て買ってきたのかなとじっと見つめていると、ハンナが笑みを深めた。
「ゼノン国王様よりお花が届きましたよ」
「おっ、お父様から⁉」
続けて「冷酷なお父様が私に花を?」と言いかけるも、部屋にマシューが入ってきたことに気づいて、ソフィアはすんでのところで言葉を飲み込む。
とはいえ、驚愕の表情までは隠しきれなくて、マシューはソフィアを見るなり小さく噴き出した。
「本当だよ。今朝、そろそろ姫様の誕生日だと話をしたら、ゼノン様がすぐに町の花屋へ使いを出したんだ。まだ開店前の時刻だったから、店主も慌てただろうね」
「……う、嬉しいわ。後でお父様にお礼を言わなくちゃ」
少し強張った笑みを浮かべつつ、ソフィアはちらりと部屋のテーブルを見た。
貝殻に模したお皿に焼き菓子が乗っていて、これはソフィアが本を読み始めた頃にハンナが準備してくれたものだ。