シュクリ・エルムの涙◆
[32]目覚めの予感?
──シュッ!!
思わず目を瞑り、しゃがみ込んだあたしの真上で、緊迫した空気を斬り裂く音が響いた。
見上げれば上空へ弓を構えたツパおばちゃんの腕と、その上に顔をしかめた毛むくじゃらの化け物が……これってあの、パパとママの両親を襲ったザイーダだ……でも色が違う。同じ黄色い眼をしているけれど、その姿は以前のヴィジョンで見た真っ黒ではなく──金色掛かった白だった!(註1)
「リルヴィ、私から離れてください。こいつが狙っているのは貴女ではなく私です!」
その声と共におばちゃんが左へ走り、右上腕に矢を突き刺された大きな化け物が、あたしの目の前にドスンと着地した。
狼とも熊とも獅子ともつかない、鋭い眼と爪と牙。
余りの近さとその怖しい形相に、つい萎縮して動けなかった。でも確かに狙いはあたしではないらしい。化け物はこちらを見ることもなく、ツパおばちゃんをすぐさま追いかけ始めた。
「アイガー! リルヴィを守ってください!!」
「お……おばちゃんっ!!」
ツパおばちゃんが遠ざかりながら叫んだ。背負った荷物もウエスト・ポーチも、投げ捨ててひたすら駆けてゆく。自分がやられたら、あたしが攫われてしまう。おばちゃんはきっとそう思ったんだ。あたしは震える身体に力を込め、何とかおばちゃんの背中を追跡した。
ダメだよ……死んじゃ! おばちゃんはこれから自分を責め立てない、楽しい人生を生きなくちゃいけないんだ!!
思わず目を瞑り、しゃがみ込んだあたしの真上で、緊迫した空気を斬り裂く音が響いた。
見上げれば上空へ弓を構えたツパおばちゃんの腕と、その上に顔をしかめた毛むくじゃらの化け物が……これってあの、パパとママの両親を襲ったザイーダだ……でも色が違う。同じ黄色い眼をしているけれど、その姿は以前のヴィジョンで見た真っ黒ではなく──金色掛かった白だった!(註1)
「リルヴィ、私から離れてください。こいつが狙っているのは貴女ではなく私です!」
その声と共におばちゃんが左へ走り、右上腕に矢を突き刺された大きな化け物が、あたしの目の前にドスンと着地した。
狼とも熊とも獅子ともつかない、鋭い眼と爪と牙。
余りの近さとその怖しい形相に、つい萎縮して動けなかった。でも確かに狙いはあたしではないらしい。化け物はこちらを見ることもなく、ツパおばちゃんをすぐさま追いかけ始めた。
「アイガー! リルヴィを守ってください!!」
「お……おばちゃんっ!!」
ツパおばちゃんが遠ざかりながら叫んだ。背負った荷物もウエスト・ポーチも、投げ捨ててひたすら駆けてゆく。自分がやられたら、あたしが攫われてしまう。おばちゃんはきっとそう思ったんだ。あたしは震える身体に力を込め、何とかおばちゃんの背中を追跡した。
ダメだよ……死んじゃ! おばちゃんはこれから自分を責め立てない、楽しい人生を生きなくちゃいけないんだ!!