シュクリ・エルムの涙◆
 一旦テントに戻り着替えを用意する。幕の中には数本の枝にぶら下げられたテントの布に、湯気の立つお湯が満たされていた。アッシュが詳しく説明をしながら、小さな固形石鹸と、小鍋を手桶代わりに渡してくれた。

 ああ~生き返る心地ってこういうことかも!

 早速服を脱いで幕の上に掛け、頭からお湯をかぶった。埃も汚れも痒みも一気に流れ落ちた気さえする爽快感。急いで石鹸を泡立てて脳天から足先までを擦る。お湯は限られているから、上手く(すす)がないと足りなくなるかも知れない。

 気持ちは良いけれど、のんびりしている場合ではないのだ。あたしは泡を流し尽くして、用意してもらったバスタオルで全身を(ぬぐ)った。

 あとは服を着て、髪を乾かせば~となった頃。

「危ないっ!!」

 誰かの声がそう叫んで!

 途端、幕の向こうが赤く染まる!!

 ──って、サリファの光線!?

 あたしは慌ててバスタオルを身に巻き付けた。

 幕を寄せた先に見えたのは、何倍もの高さに燃え立つ焚き火だった──!!


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