シュクリ・エルムの涙◆
[36]誰の叫び? *
「おばちゃんっ!? アイガー!! アッシュ、ルク!!」
あたしは紅蓮と化す炎の熱を、両腕で避けながら叫んでいた。渦のようにうねる焔が、あたしの視界の邪魔をする。三人と一匹はどうなったのだろう? きっと無事よね……? 誰か応えて!!
「おばちゃんっ!? アイガー!! アッシュ、ルク!!」
今一度叫んでみたが、誰の応答もなかった。あたしが悪いんだ……あたしが傍にいたら、みんなに危害が及ぶことはなかったのに……!
サリファの赤い光線が、この焚き火の威力を強くしたのだろうか? 立ち昇る光がまるで凝縮するように、周りの空気を歪ませて見せる。火の向こうにみんなはいるのだろうか? ならばどうして返事をしてくれないの!?
「お願い、サリファ……みんなを、ママを返して!!」
あたしは両手を胸の高さまで差し出して、激しく燃え盛る炎に一歩近付いた。突如あたしを欲しがるように、それは赤い触手を広げ……波のように頭上から覆い被さってきた!!