シュクリ・エルムの涙◆
[49]天使の微笑み?
「お、姉様……?」
ほんの一瞬の出来事だった。けれどパパを平手打ちしたのは、明らかにタラお姉様の掌だった。
『……だけど。一言言わせてもらうわヨ? どうしてまた独りきりで行動したのヨ!? どうして今まで隠してきたの!! まるで二十年前のあの時みたいに……全てを独りで背負い込もうとするなんて……だからワタシはリルヴィちゃんを向かわせたのヨ。リルヴィちゃんとユスリハちゃん、どんなに二人を助けたいと思っても、さすがに二人の目の前で自分から命を差し出せないでショ! それともアナタは自分の娘に、父親が自ら死んでいくところなんて見せられるの? ラウル、アナタを止めるには……ワタシにはもうそれしか方法が見つからなかった。二人には本当に申し訳なかったわ……だけど!!』
『……ご、めん……タラ』
パパの声は掠れて、幽かに震えていた。目尻の端が僅かに赤い。それは叩かれたせいだったのだろうか。それとも涙を堪えているのだろうか。
きっとパパはあの時を思い出したんだ。パパが『鍵の付いた祈り』で死ぬのなら、自分が舌を噛んで先に死ぬ! ってママが叫んだあの時を。ママはパパの考えをお見通しで、全身全霊でパパの行動を止めようとした。そしてタラお姉様も……もしかしたらツパおばちゃんも、それを止めるためにパパを追いかけたのかも知れない。
『アナタもアナタヨ、ツパイ! 名前にそんなカラクリがあったこと、どうして今までナイショにしてきたのヨ!? サリファはともかく、昔恋人だったウェスティに、ワタシも操られていたかも知れないって気を遣ったワケ?? 従弟の従姉だからってそんなところ、ラウルに似る必要なんてないんだから!!』
『タ、タラ……?』
パパがまくし立てられたと同時に、戻ってきたツパおばちゃんの姿が画面の隅に映り込んだ。いきなり怒りの矛先を向けられたことに、おばちゃんは驚いて呆気に取られたみたいだ。そんな投げつけられた言葉を良く噛み砕いたツパおばちゃんは、タラお姉様の気持ちを悟って申し訳なさげに俯いた。
ほんの一瞬の出来事だった。けれどパパを平手打ちしたのは、明らかにタラお姉様の掌だった。
『……だけど。一言言わせてもらうわヨ? どうしてまた独りきりで行動したのヨ!? どうして今まで隠してきたの!! まるで二十年前のあの時みたいに……全てを独りで背負い込もうとするなんて……だからワタシはリルヴィちゃんを向かわせたのヨ。リルヴィちゃんとユスリハちゃん、どんなに二人を助けたいと思っても、さすがに二人の目の前で自分から命を差し出せないでショ! それともアナタは自分の娘に、父親が自ら死んでいくところなんて見せられるの? ラウル、アナタを止めるには……ワタシにはもうそれしか方法が見つからなかった。二人には本当に申し訳なかったわ……だけど!!』
『……ご、めん……タラ』
パパの声は掠れて、幽かに震えていた。目尻の端が僅かに赤い。それは叩かれたせいだったのだろうか。それとも涙を堪えているのだろうか。
きっとパパはあの時を思い出したんだ。パパが『鍵の付いた祈り』で死ぬのなら、自分が舌を噛んで先に死ぬ! ってママが叫んだあの時を。ママはパパの考えをお見通しで、全身全霊でパパの行動を止めようとした。そしてタラお姉様も……もしかしたらツパおばちゃんも、それを止めるためにパパを追いかけたのかも知れない。
『アナタもアナタヨ、ツパイ! 名前にそんなカラクリがあったこと、どうして今までナイショにしてきたのヨ!? サリファはともかく、昔恋人だったウェスティに、ワタシも操られていたかも知れないって気を遣ったワケ?? 従弟の従姉だからってそんなところ、ラウルに似る必要なんてないんだから!!』
『タ、タラ……?』
パパがまくし立てられたと同時に、戻ってきたツパおばちゃんの姿が画面の隅に映り込んだ。いきなり怒りの矛先を向けられたことに、おばちゃんは驚いて呆気に取られたみたいだ。そんな投げつけられた言葉を良く噛み砕いたツパおばちゃんは、タラお姉様の気持ちを悟って申し訳なさげに俯いた。