シュクリ・エルムの涙◆
「ピータン起きてるの?」
「ああ、リルが髪を乾かしている時に目を覚ましたんだ。今は船内を巡回中だよ」

 パパが中央テーブルから、お茶を飲みつつ説明をしてくれる。ジュエルの魔法を掛けられたお陰で長生きのピータンも、もう二十歳に近い。だから以前は日中起きているように変えられていた習性も、数年前から夜行性に戻されている。

「あ、戻ってきた。ピータン、おはよー!」

 キッチン横の開放された扉から、颯爽と現れたピータンに元気な挨拶をする。それに気付いたピータンは、嬉しそうにあたしの肩めがけて飛んできた。

「……でも、ごめん。おやすみ、ピータン」

 あたしは申し訳なさそうな声と顔で謝った。途端方向転換しパパの許へ飛び立ってしまう。パパの掌に着地したピータンは、よしよしと慰められながら、その小さな背中は寂しそうだった。

 だって~ヘタにあんまり使ったことのない脳ミソフル回転させたから、もう疲れて眠いんだもの~!

「ごめんったら! 明日からちょっと夜更かし出来るからさ~それまで待ってて、ピータン!」

 その弁明で害した機嫌は少し戻せたようだった。振り返ったピータンは「じゃあ、明日ねー!」みたいな調子で飛膜を振った。まったくもう~ゲンキンなんだから!

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