シュクリ・エルムの涙◆
■第九章■ TO THE PAST(過去へ)!
[65]初めての瞋恚(しんい)?
「リル……リル……──」
自分の名を呼ばれて目覚めるのは、もう何度目だろう?
「リル! リルっ!!」
けれどその声色は、いつもの穏やかで優しいものではなかった。とても深刻そうで、とても必死で……あたしの意識も無理矢理引き寄せられるように覚醒した。
「ん……」
「リル! 大丈夫か!?」
自分の右耳に吸い込まれた名を、奏でていたのはアッシュの声。
僅かに開いた瞼から見えるのは……鍾乳洞の天井じゃない。アッシュが火口下のあたしの許へ飛ばされた時のように、きっとあたしも何処かへ飛ばされたんだ。そして呼び掛けるのがルクじゃなくて、アッシュだっていうことは……?
「……ア、アッシュ!?」
あたしはようやく瞳をまともに機能させて、すぐさま声の方向へ顔を向けた。
一気に鮮明になった視界には、同じようにこちらを心配するアッシュ。でもその身体は飛行船の脱出用シューターらしきカプセル状の空間に閉じ込められている。
自分の名を呼ばれて目覚めるのは、もう何度目だろう?
「リル! リルっ!!」
けれどその声色は、いつもの穏やかで優しいものではなかった。とても深刻そうで、とても必死で……あたしの意識も無理矢理引き寄せられるように覚醒した。
「ん……」
「リル! 大丈夫か!?」
自分の右耳に吸い込まれた名を、奏でていたのはアッシュの声。
僅かに開いた瞼から見えるのは……鍾乳洞の天井じゃない。アッシュが火口下のあたしの許へ飛ばされた時のように、きっとあたしも何処かへ飛ばされたんだ。そして呼び掛けるのがルクじゃなくて、アッシュだっていうことは……?
「……ア、アッシュ!?」
あたしはようやく瞳をまともに機能させて、すぐさま声の方向へ顔を向けた。
一気に鮮明になった視界には、同じようにこちらを心配するアッシュ。でもその身体は飛行船の脱出用シューターらしきカプセル状の空間に閉じ込められている。