シュクリ・エルムの涙◆
[75]選ばれし者の宿命(さだめ)? *
あたしは咄嗟に自分の義眼を取り出した。パパは奪われまいと急いで瞼を閉じようとしたけれど、寸での所で『ジュエル』が飛び出す! 浮遊した『ラヴェンダー・ジュエル』は真っ直ぐあたしに向かってきて、柔らかい光に戻るとあたしの左瞼に吸い込まれた。途端あたしの身体も浮き上がって、ふんわり緩やかな風に纏われた。
「温かい……」
この十四年間、ほとんどの時を共にしてきたジュエルなのに、これほどジュエルを「感じた」ことはなかったと思う。
この心地良いぬくもりこそが、ジュエルのみんなを愛する気持ちなんだと、心の芯から感じることが出来た。
薄紫色の光が末端に向かってじんわりと拡がる。淡いラヴェンダーの芳香があたしを包み込む。瞼を開くと紫色に変わった髪がなびいていて、その向こうに唖然とするみんなの顔が見えた。
「リル……髪が……両目が、ラヴェンダー色に……!」
一番近くにいたパパが、驚きに満ちた表情で呟いた。パパでさえ、ジュエルを身に宿しても自分の漆黒の瞳がジュエルと同じ色に変わることはなかったのだ。
リトスの家の名『デリテリート』は、王家に仕える義眼師の家系だ。一度目の町狩りでリトス独りになってしまった血筋だけれど、その後避難してきた他国民の中に王家の遠縁が生き残っていたように、デリテリート家も数人救われていたのだろうとアッシュは推理した。
やがて何年も何代も歴史は流れ、王家の姫を娶った義眼師の許にパパが生まれた。ジュエルを宿してきた王家アイフェンマイアと、ジュエルの素であるデリテリート家、更にジュエルに力を注いできた三家系の一つ【薫りの民】ミュールレインの血を持ったママから生まれたあたし……今までの宿主の中に、これほどジュエルにまつわる血を持つ者はいない筈!!
「温かい……」
この十四年間、ほとんどの時を共にしてきたジュエルなのに、これほどジュエルを「感じた」ことはなかったと思う。
この心地良いぬくもりこそが、ジュエルのみんなを愛する気持ちなんだと、心の芯から感じることが出来た。
薄紫色の光が末端に向かってじんわりと拡がる。淡いラヴェンダーの芳香があたしを包み込む。瞼を開くと紫色に変わった髪がなびいていて、その向こうに唖然とするみんなの顔が見えた。
「リル……髪が……両目が、ラヴェンダー色に……!」
一番近くにいたパパが、驚きに満ちた表情で呟いた。パパでさえ、ジュエルを身に宿しても自分の漆黒の瞳がジュエルと同じ色に変わることはなかったのだ。
リトスの家の名『デリテリート』は、王家に仕える義眼師の家系だ。一度目の町狩りでリトス独りになってしまった血筋だけれど、その後避難してきた他国民の中に王家の遠縁が生き残っていたように、デリテリート家も数人救われていたのだろうとアッシュは推理した。
やがて何年も何代も歴史は流れ、王家の姫を娶った義眼師の許にパパが生まれた。ジュエルを宿してきた王家アイフェンマイアと、ジュエルの素であるデリテリート家、更にジュエルに力を注いできた三家系の一つ【薫りの民】ミュールレインの血を持ったママから生まれたあたし……今までの宿主の中に、これほどジュエルにまつわる血を持つ者はいない筈!!