シュクリ・エルムの涙◆
「やっと全員が揃ったね。リル、三年振りに会ったんだ。二人にちゃんとご挨拶しなさい」

 真正面で微笑むパパが、目配せをしながらあたしに言う。あたしはふうと一息小さく吐いて、腰掛けたチェアから仕方なさそうに立ち上がった。

「アシュリー、ルクアルノ……お久し振りでございます。再びお会い出来まして大変嬉しく思います」

 あたしは少し腰を落とし、スカートを軽く摘まんで可憐にお辞儀をした。

「「リルヴィ、こちらこそ再会出来ましたこと、とても光栄でございます」」

 両側の『二人』が立ち上がり、優雅な紳士の礼を返す……って、こんなフォーマルな挨拶、今更古くない??

「……これでいい? パパ」

 あたしは姿勢を戻してパパに問い掛けた。

「OKだよ、リル。もちろん最後の確認がなかったらね」
「やっぱり~?」

 あたしはペロッと舌を出して、イタズラっ子な笑顔で頭を掻いた。目の前の四人がプッと吹き出す! 五人の楽しそうな笑い声が、船内にしばらく響き渡った──!!



   ■第一章■ TO THE VELLE (ヴェルへ)! ──完──



*お読みくださり誠に有難うございます*

 アッシュの叔従父(いとこおじ)であるシアンの詳細や、彼とタラとの出逢いは、前作『ラヴェンダー・ジュエルの瞳』の最終章【Prelude to 『Ash or Rukh』】~続編に続くひとひらの物語~にございますが、そちらはこちらの続編ありきで誕生した物語でございました。

 ですのでアッシュの父親が、まさにそちらの物語で話題に上る「従兄(いとこ)」でございます。

 それから既に今作の「キーワード」をご覧になっている方はご存知と思いますが、最後に「三角関係」がございます。

 この作者としましては初の本格的なトライアングラー、宜しければヤキモキしながらお楽しみくださいませ♪


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