シュクリ・エルムの涙◆

[82]本当のエルム? 〈El〉+*

 あたしを囲う大気の流れが、肩先や指先で白いリボンのようにはためいていた。

 同じく目前のエルムからも、全身の輪郭を描く白光が揺らぐ。

 どうか、お願いぃぃ……あと数センチ!

 なのにこの僅かがなかなか追いつかない!!

 こちらを見上げて落ちてゆくエルムの瞳から、(にじ)み出た涙があたしの頬に命中した。それに気付いたエルムは何故だか微笑んで……いや、ダメだよ! 諦めないで!! あたし絶対つかまえるから!!

「さようなら……リルヴィ」
「わっ!!」 

 その時再びシュクリが噴火した!? その波動はあたしの背中を押すようにグンと一歩を近付けてくれて、あたしはついにエルムの手を握りしめることが出来た!!

「ありがとう……リルヴィ」
「ううん、シュクリのお陰だよ」

 エルムを抱え込んで、海原の寸前で旋回する。転回した視界にはインターデビルの真上で噴煙を漂わせるシュクリ、更にその上には不気味な黒煙が……いや、あれ、サリファだ……怒りにまみれて黒い闇と化し、上空からシュクリを呑み込もうとしていた!

「シュクリが危ない……リルヴィ、リトス、どうかアタシの力を使って!」

 シュクリの許へ戻ろうと飛行を続ける最中(さなか)、エルムはあたしの首に両腕を絡め、火口の中と同様あたしと額を触れさせた。その刹那──

「ふ、わ……──」

 体内に流れ込んでくる厖大(ぼうだい)な金色のエネルギー、温かな波光が指先まで隅々と全身を駆け巡る!



 ──お願い、リトス、リルヴィ……シュクリを、ヴェルを……世界を、救って──!!

 胸に響いたエルムの祈りに『ラヴェンダー・ジュエル』が応えた!!



 エルムとあたしの体表が発光したと思うや否や、エルムからは金の、あたしからは薄紫の光の帯が内から生まれ、螺旋を描くようにお互いに巻きつきながらシュクリへ向けて伸びていった。吊られるようにエルムとあたしも流されて上昇し、帯の先端がシュクリの山頂へ行き着くのを見届けた。


< 290 / 309 >

この作品をシェア

pagetop