シュクリ・エルムの涙◆
【後日談】

 それからまもなくして、タラお姉様は元気いっぱいの男の子を産んだ。

 帰国後ベビちゃんに名付けられたのは、ドイツ語で宝石を意味するという「エーデルシュタイン」──『ラヴェンダー・ジュエル』の恩恵が沢山受けられますように、との願いが込められているのだそうだ。もちろん愛称は名前の「前半」エーデルという。



 ちなみに調べてみたら『ジュエル』の名前「リトス」も、ギリシャ語で宝石を意味するらしい。リトスはラヴェンダー・ジュエルになるべくして生まれてきたのかも知れない。

 もちろんアッシュのスパルタのお陰で、ルクとあたしはあっと言う間に宿題を片付けた。残り数日は楽しく過ごし、名残惜しくも帰郷した我が家は、特に何事もなく無事そこに在った。屋根の上の上を見上げても、ウェスティが仕掛けた糸の片鱗など、全く見つけることは出来なかったけれど。

 パパは帰りの飛行船で、口が酸っぱくなるほどジュエルにお説教をくれたらしい。

 元々魔法の影響を受けさせたくなくてヴェルから遠ざけていたのに、結局あんな大騒動にあたしを巻き込んだからだって。

 でも同性で同い年のあたしだったからこそ、エルムと波長を合わせることが出来て、シュクリに力を与える金色とラヴェンダー色の光を生み出すことが出来たと思うのよねぇ? まぁ……こればかりは、シュクリとリトスのみぞ知る……ところかしらね?? 
  
 兎にも角にもその叱責の影響なのか、帰郷後のジュエルは以前のように、あたしに「()える」魔法しか与えてくれなかった。リトスの声もあれから一度も聞こえたことはない。でも……これでいいのかなぁって。そうでないと、ついジュエルに頼ってしまいそうだものね。


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