シュクリ・エルムの涙◆
[10]理想の家族? *
少々心に重さを感じながら、背中にもリュックを背負ったあたしとルクは、軽快に歩くアッシュに連れられ飛行船の外へ出た。
パパとママが持ちきれなかった荷物も、二人が担いでくれている。
辺りの靄はすっかり晴れて、遠くのラヴェンダー畑の薄紫も、大地の緑と空の碧さに良く映えている。そしてすぐ傍には数機の飛行船。ココはヴェルの東側にある公共の駐艇場なのだ。同式のスペースが西側にもあるので、アッシュが利用したイギリスとの定期飛行船は、そちらで乗り降りされている。
「ルクの家に寄りながら向かおうか? 宿題持ってリルの家に行こう」
意欲満々の笑顔で提案するアッシュに、更に背中が丸まっていくルク。まぁまぁ……ルクも諦めて一緒にお勉強頑張りましょう……。
あたし達はヴェルの郊外に広がる豊かな草原を楽しみながら、我が家よりも北東にあるルクのお宅を目指した。春と言ってもまだ少し肌寒くて、花々が咲き乱れるのはこれからなんだろう。道端の草花は蕾を膨らませてはいるけれど、まだ開くには数日掛かりそうな雰囲気だ。