シュクリ・エルムの涙◆
「それはむしろ助かるわ~! あの子ったらちっともやる気を見せないもんだから、小言も言い飽きたところだったのよ! あ、今日のお城の昼食会、二人も行くのでしょ? 悪いのだけどあの子をお伴に付けてもらえるかしら? 独りじゃあ頼りなくて心配で! 衣装持たせるわねっ」

 そうしておばさんはあたし達の同意を待たずに、奥へと駆けていってしまった。……って?

「おじさんとおばさんは出席しないんですか?」

 あたしは残されたおじさんに問い掛けた。

「ああ、今回は息子がツパイ姉さんの同伴者(パートナー)だからね。と言っても姉は王宮に居る訳だから……かあさんは其処までの道中さえも、息子が独りで行けるのか心配なんだ……全く過保護でお恥ずかしい」
「あ、いえ……」

 ルクのパパはツパおばちゃんの弟だ。結婚が遅かったせいか、ルクは両親から必要以上に大切に育てられたらしい。王室の食事会に招かれた息子が誇らしいのだろう、おばさんは「髪がはねてるわよ」とか、「あちらに着いたらちゃんとお辞儀と挨拶を忘れないでね」なんて世話を焼きながら、それを煙たがるルクを連れ立ち戻ってきた。


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