シュクリ・エルムの涙◆
「ユーシィ!!」

 パパが叫びながら駆け寄ってきた。光はママを中心にグルグルと回り、誰も寄せつけようとはしなかった。

『おぉや……母親とはどうしてこうも強いものかね……。お陰で的が外れてしまったが……まぁ、今はこの肉体でも構わないか……いや、むしろ好都合だ。ウル、シュクリの山頂でお前を待つ。ユスリハを返してほしくば、『ラヴェンダー・ジュエル』と変わりの肉体、出来れば若くて美しい娘を頼むよ……連れて来たら、お前の愛妻を無事解き放してやろう……これから陽が昇ってからの三日間猶予を与える。それまでユスリハには手出しはしないと誓ってあげるよ。飛行船で一気に来てくれても構わないが、変なことを考えているなら、こちらも容赦はしない……良いね? ウル、ノーム……それから「宝物に吊られてやって来た、可愛い孫のリルヴィ」……』
「……あっ……ああ……!」

 あたしがずっと会いたかったおばあちゃんは……結界に閉じ込められた悪いお妃の「成りすまし」だった……!

 ママは気を失ったように瞳を閉じ、光に(いだ)かれて宙に浮かんだ。
 
「サリファっ! 待て……ユーシィを──!!」
「ユスリハ!!」

 パパとツパおばちゃんの叫びが、紅く染まっていく夜空に(わび)しく響いた。

 どうしよう……どうしよう……! あたしのせいだ……あたしを(かば)ってママは──!!





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