シュクリ・エルムの涙◆

[18]選択の不可能?

「リル! 大丈夫か? 怪我は……何処も痛くないかい!?」

 草むらにしゃがみ込んだまま、あたしは膝に顔を突っ伏して泣いた……ママが、ママが……あたしの身代りに連れ去られてしまった──!

 頭上から掛けられたパパの心配そうな声に、ただ「怪我なんてしていない」と伝えたくて首を振った。そんなあたしの肩がパパの両腕で優しく包み込まれた。

「ごめん……パパが悪いんだ。本当のことをリルにずっと黙ってきて……こんな真夜中に独りで片付けようとしたから……ごめん、リル……」

 左耳の傍で囁かれたパパの言葉は、とても悔しそうでとても悲しそうで……そしてひたすら自分を責め立てる、心からの謝罪だった。

「ちが……パパ、違う、の……! あたし……あたしがパパとママに、ずっと隠してた……それにあたしも……家を抜け出して、おばあちゃんの所へ行こうとしたんだ……『ジュエル』を、持ち出して……!」

 きっとパパとママがいなかったら、あたしはサリファに取り込まれて、あたしこそが連れ去られていたに違いない。それも……サリファの欲しがった『ラヴェンダー・ジュエル』と共に──。


< 61 / 309 >

この作品をシェア

pagetop