シュクリ・エルムの涙◆
[20]戸惑いの騎士?
ルクの声と共に明かりが灯されたので、あたしはまるで蛙が飛び跳ねるように、アッシュから背後へ遠ざかっていた。
「え……? っと……ア、アッシュ??」
エントランス横のスイッチに手を掛けたままのルクが、ビックリまなこでアッシュの背中に問い掛ける。
「ごめん、ルク。驚かせて……王宮からリルの護衛を頼まれてね。着いた途端リルが照明も点けずに走り込んだら、何かにつまづいたみたいで……僕は転ばないように支えていただけだよ」
振り向きざまに説明したアッシュは、特に動揺の兆しも見せなかった。言い終えた後にあたしにもう一度振り向いて、ルクに気付かれないよう鮮やかなウィンクを決めるところは……もうさすがとしか言えない。
「そ、そう……ボクも王宮に行ったんだけど……ル、ルヴィのお父さんとお母さんの噂を、みんながしていて……き、気になったから、来てみたんだ……それで……その……」
「噂……」
もう、みんな知っているんだ。ママが紅い光に攫われて、パパが助けに向かったことを。
ルクはそこまで小声で呟いた後、俯いて黙り込んでしまった。あたしのために消沈しているルクを、いつの間にか励まそうとしている自分がいた。
「ルク、あの……心配してくれてありがとう! でも……大丈夫だから。パパがきっとママを助け出してくれるから……ルクはお家で休んでて。あたし、タラお姉様の所で待っていることになったから」
「ルヴィ……? ひ、左眼、どうしたの? 義眼、な、失くしちゃったの?」
「あ……」
ゆっくりともたげたルクの翠色の瞳が、アッシュの横から覗かせた左瞼に気が付いた。『ジュエル』がパパを宿主と決めて、空っぽになってしまった瞼の裏。もちろん伏せてはいたのだけど、サッと手を添えて背中を向ける。そこからまた涙が溢れてしまいそうだったからだ。
「ううん、あるよ……義眼嵌めて、荷造りしてくる! アッシュ……ごめん、ちょっと待ってて!!」
あたしは掠れてしまわないように喉元に力を込めて、慌てて自室に駆けていった。
★ ★ ★
「え……? っと……ア、アッシュ??」
エントランス横のスイッチに手を掛けたままのルクが、ビックリまなこでアッシュの背中に問い掛ける。
「ごめん、ルク。驚かせて……王宮からリルの護衛を頼まれてね。着いた途端リルが照明も点けずに走り込んだら、何かにつまづいたみたいで……僕は転ばないように支えていただけだよ」
振り向きざまに説明したアッシュは、特に動揺の兆しも見せなかった。言い終えた後にあたしにもう一度振り向いて、ルクに気付かれないよう鮮やかなウィンクを決めるところは……もうさすがとしか言えない。
「そ、そう……ボクも王宮に行ったんだけど……ル、ルヴィのお父さんとお母さんの噂を、みんながしていて……き、気になったから、来てみたんだ……それで……その……」
「噂……」
もう、みんな知っているんだ。ママが紅い光に攫われて、パパが助けに向かったことを。
ルクはそこまで小声で呟いた後、俯いて黙り込んでしまった。あたしのために消沈しているルクを、いつの間にか励まそうとしている自分がいた。
「ルク、あの……心配してくれてありがとう! でも……大丈夫だから。パパがきっとママを助け出してくれるから……ルクはお家で休んでて。あたし、タラお姉様の所で待っていることになったから」
「ルヴィ……? ひ、左眼、どうしたの? 義眼、な、失くしちゃったの?」
「あ……」
ゆっくりともたげたルクの翠色の瞳が、アッシュの横から覗かせた左瞼に気が付いた。『ジュエル』がパパを宿主と決めて、空っぽになってしまった瞼の裏。もちろん伏せてはいたのだけど、サッと手を添えて背中を向ける。そこからまた涙が溢れてしまいそうだったからだ。
「ううん、あるよ……義眼嵌めて、荷造りしてくる! アッシュ……ごめん、ちょっと待ってて!!」
あたしは掠れてしまわないように喉元に力を込めて、慌てて自室に駆けていった。
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