シュクリ・エルムの涙◆
それからお姉様とお兄様のラブラブな会話を上の空で聞きつつ、黙々と美味しい食事を進めている内に、とうとうエントランスのチャイムが響いた。
「ツパおばちゃんだ!」あたしは元気良く立ち上がり、シアンお兄様の後へ続く。なのにお兄様が開いた扉の向こうに立っていたのは、白髪と白髭のロガールじじ様だった。
「早くにすまんね。ツパイは奥かい?」
じじ様の息遣いは荒く弾んで、額に薄っすらと汗も光っている。
目の前で相対したシアンお兄様が、少し心配そうに尋ねた。
「いえ……ツパイはまだですが……どうかしたんですか?」
「参ったな……此処にも居ないのか……昨夜の事件後から見当たらないんだよ。自宅を訪ねたがアイガーも見えなくてね……てっきり此処へ来たものかと」
「アイガーもですか? 確かに夜半ツパイの使いが来て、今朝訪問の約束はあるのですが」
ツパおばちゃん……きっとパパを追って、愛犬アイガーと一緒に山へ行ったんだ……。
あたしはじじ様とお兄様の会話からそう確信した。ツパおばちゃんが昔自分を「僕」と呼んでいたのは、『ジュエル』のヴィジョンで知っている……最後に「後から参ります」とあたしに言った時、ツパおばちゃんは嘘をついたからこそ、動揺して昔の癖で「僕」と言ってしまったんだ。
「とりあえず中へどうぞ。お茶でも飲んで落ち着いてください」
「ああ……ありがとう。外に従者を待たせているから、ちょっと待っていてくれ」
じじ様は疲れたように息を吐いて、お兄様の手招きに応じた。一度扉を出て、再び入った先であたしの姿を見つけ、「大丈夫かい?」と肩を抱いてくれた。こんなに心配してくれる仲間に囲まれているんだ……あたしは出来る限りの笑顔を見せて「はい」と一つ頷いてみせた。
「ツパおばちゃんだ!」あたしは元気良く立ち上がり、シアンお兄様の後へ続く。なのにお兄様が開いた扉の向こうに立っていたのは、白髪と白髭のロガールじじ様だった。
「早くにすまんね。ツパイは奥かい?」
じじ様の息遣いは荒く弾んで、額に薄っすらと汗も光っている。
目の前で相対したシアンお兄様が、少し心配そうに尋ねた。
「いえ……ツパイはまだですが……どうかしたんですか?」
「参ったな……此処にも居ないのか……昨夜の事件後から見当たらないんだよ。自宅を訪ねたがアイガーも見えなくてね……てっきり此処へ来たものかと」
「アイガーもですか? 確かに夜半ツパイの使いが来て、今朝訪問の約束はあるのですが」
ツパおばちゃん……きっとパパを追って、愛犬アイガーと一緒に山へ行ったんだ……。
あたしはじじ様とお兄様の会話からそう確信した。ツパおばちゃんが昔自分を「僕」と呼んでいたのは、『ジュエル』のヴィジョンで知っている……最後に「後から参ります」とあたしに言った時、ツパおばちゃんは嘘をついたからこそ、動揺して昔の癖で「僕」と言ってしまったんだ。
「とりあえず中へどうぞ。お茶でも飲んで落ち着いてください」
「ああ……ありがとう。外に従者を待たせているから、ちょっと待っていてくれ」
じじ様は疲れたように息を吐いて、お兄様の手招きに応じた。一度扉を出て、再び入った先であたしの姿を見つけ、「大丈夫かい?」と肩を抱いてくれた。こんなに心配してくれる仲間に囲まれているんだ……あたしは出来る限りの笑顔を見せて「はい」と一つ頷いてみせた。