シュクリ・エルムの涙◆
[28]紅の戦慄?
「ルク! ルクー! 無事ね!?」
取る物もとりあえず、アッシュとあたしはルクがぶら下がっている筈の大きな樹を目指し、根元から樹上へ大声で呼び掛けた。
「う、うん~何とか大丈夫みたい……」
弱々しいルクの声が枝葉の奥から聞こえてくる。アッシュはあたしにココから離れないよう念を押し、その幹を軽々と登っていった。
周りはまだまだ森の装いで、頂に近付くにつれ木々はまばらになる。サリファから隠れるにはちょうど良かったみたいだけど、山頂は随分遠くに思えた。
「まったく……タラはこんな子供達に、なんという無茶をさせるのです……」
「え?」
突然背後から怒ったような声が投げ掛けられて、あたしは急いで振り向いた。
歩み寄るシルエットは小柄な女性のようだった。髪を昔のママのようにポニーテールにして、けれどその色は青みがかった黒髪で……って、ツパおばちゃん!?
「リルヴィ、何処も怪我はしていませんか? ルクアルノの荷はもう見つけてありますので安心してください」
「う……うん、アッシュもあたしも大丈夫。あの……ツパおばちゃん、よね??」
目の前で止まった明らかに「ツパおばちゃん」に、あたしはそれでも不思議そうに問い掛けてしまった。だってその顔も服装も、いつものツパおばちゃんではなかったのだから!
常に鼻のてっぺんまで伸ばされていた前髪は、眉毛の辺りで綺麗に切り揃えられていた。当然眼が見える状態だけど、どうしてなのか両瞼とも瞑って俯いたままだ。格好は登山用に動きやすい上下を身に着けている。でもその左胸には防御用らしき硬質の胸当てが装着されていて、右手には……大きな弓を携えていた!
取る物もとりあえず、アッシュとあたしはルクがぶら下がっている筈の大きな樹を目指し、根元から樹上へ大声で呼び掛けた。
「う、うん~何とか大丈夫みたい……」
弱々しいルクの声が枝葉の奥から聞こえてくる。アッシュはあたしにココから離れないよう念を押し、その幹を軽々と登っていった。
周りはまだまだ森の装いで、頂に近付くにつれ木々はまばらになる。サリファから隠れるにはちょうど良かったみたいだけど、山頂は随分遠くに思えた。
「まったく……タラはこんな子供達に、なんという無茶をさせるのです……」
「え?」
突然背後から怒ったような声が投げ掛けられて、あたしは急いで振り向いた。
歩み寄るシルエットは小柄な女性のようだった。髪を昔のママのようにポニーテールにして、けれどその色は青みがかった黒髪で……って、ツパおばちゃん!?
「リルヴィ、何処も怪我はしていませんか? ルクアルノの荷はもう見つけてありますので安心してください」
「う……うん、アッシュもあたしも大丈夫。あの……ツパおばちゃん、よね??」
目の前で止まった明らかに「ツパおばちゃん」に、あたしはそれでも不思議そうに問い掛けてしまった。だってその顔も服装も、いつものツパおばちゃんではなかったのだから!
常に鼻のてっぺんまで伸ばされていた前髪は、眉毛の辺りで綺麗に切り揃えられていた。当然眼が見える状態だけど、どうしてなのか両瞼とも瞑って俯いたままだ。格好は登山用に動きやすい上下を身に着けている。でもその左胸には防御用らしき硬質の胸当てが装着されていて、右手には……大きな弓を携えていた!