シュクリ・エルムの涙◆
「こんな姿、お見せしたくないから独りで出てきたのです。……が、もはや仕方がありませんね」

 ツパおばちゃんは大きく肩を上下させて、諦めたような溜息を吐いた。そうしている間にも二人が幹を伝って地面まで降りてきた。振り返ったあたしの瞳には、みるみるうちに変わっていくアッシュとルクの表情が読み取れた。彼らの目も口も驚愕の色を見せながら開かれる──って、そんなに驚くことかしら?

「「お……おばさんっ!?」」

 同時に二人が驚きの叫びを上げたので、あたしは慌てて首を戻した。その先には……瞳を開いてあたし達を見詰めるツパおばちゃんの……その眼が……まっかっか!? ──だった!!

「どうやらラヴェルもユスリハも……そして『ジュエル』でさえも、リルヴィには明かさずにいた模様ですね。私の眼が赤いことを」
「え……? パパもママも知ってるの!?」

 あたしの戸惑う声にツパおばちゃんは頷いた。

「通常『先天性白皮症(アルビノ)』でもない限り、赤い目の人間などそうはいませんからね。特にヴェルには……現状一人も存在しません。ですから今まで隠してきたのですが……ラヴェルは以前からこの事実に気付いていて、ユスリハもおそらく一度は目撃している筈です」(註1)

 そう言って再び瞼を伏せたツパおばちゃんの声色は、何処となく口惜しそうに聞こえた。

 でも『アルビノ』の人って、髪の毛なんかは白いのよね? ツパおばちゃんは染めている訳でもなさそうだし……ってことはそういう訳ではないんだろう。なのにどうしてお目目がウサギさんみたいに真っ赤なの!?


< 96 / 309 >

この作品をシェア

pagetop