撫でて、触れて ~ヒーロースーツの彼に恋する気持ちが止まりません~
「天下無敵のスターリーレッドの弱点がピーマンとはね~。ねぇ、みのりちゃん」
「ですね」
つぼっちさんに振られた私も相槌を打った。
「いいですよ、笑うなら笑っても」
ヤナさんがわざとふてくされた表情を作ってみせ、みんながまた笑う。
……ピーマンが苦手なんだ。しかも苦いから。これまた意外だ。
彼の新しい一面を知れたことをよろこぶのと同時に、胸に鈍い痛みが走る。
恵里菜さんは、私の知らないヤナさんのことをたくさん知っている。
ヤナさんのとなりで微笑む彼女――堀恵里菜さんが扮するのは、スターリーグリーン。『星河戦隊ファイブスター』のスーツアクターで女性なのは、私と彼女だけだ。
ヤナさんと恵里菜さんは、同じアクション俳優専門の事務所に所属している同い年の同期だという。
でも私は、距離感の近さの理由がそれだけではないと思っている。
恵里菜さんを見ているとわかるのだ。彼女はきっと、ヤナさんに恋をしている。
みんなが『ヤナさん』と呼ぶなか彼女だけが『しゅうくん』と呼ぶのも、彼女がヤナさんを見つめる視線に甘やかなものが交じっているのも、他のメンバーにはしないボディタッチをヤナさんにだけはするのも。私の勘違いではない――ような気がする。
もちろん、恵里菜さん本人に確かめたことはないし、証拠もないけど、こういうのって同じ人を好きでいるなら伝わってくるものなのだ。
恵里菜さんは美人だし、細いのに出るところは出ていてスタイルがいい。性格も明るくてノリがいいから、タイプだという男性は多いだろう。
ヤナさんも、恵里菜さんのことを好きだったりするのかな。
というか、もうすでに付き合っていたりして?
……あぁ、だめだ。楽しい二次会の最中に、そんなこと考えたら暗い気分になってきてしまう。
「あ、ごめんね、ちょっと電話」
不安がぐるぐる頭を回っていると、恵里菜さんがスマホを手にして席を立った。
それからすぐ、いつの間にかテーブルに突っ伏しているつぼっちさんを、伊織くんが覗き込む。
「つぼっちさん。大丈夫ですか?」
「うーん……」
「ちょっと、顔色悪いですって。トイレ行きます?」
微かに頷くつぼっちさん。すると伊織くんが、つぼっちさんの肩を抱きかかえるようにして立ち上がる。
「すいません、ちょっと連れていってきます」
「ひとりで大丈夫?」
ヤナさんがすかさず声をかけると、伊織くんが頷く。
「はい。この人酒弱いから、慣れてます。……あーほら、ちゃんと歩いてください。支えてるんで」
伊織くんはぶつぶつ言いながらも、つぼっちさんを抱えてトイレへと向かった。
テーブルには私とヤナさんだけが残された形になる。
「ですね」
つぼっちさんに振られた私も相槌を打った。
「いいですよ、笑うなら笑っても」
ヤナさんがわざとふてくされた表情を作ってみせ、みんながまた笑う。
……ピーマンが苦手なんだ。しかも苦いから。これまた意外だ。
彼の新しい一面を知れたことをよろこぶのと同時に、胸に鈍い痛みが走る。
恵里菜さんは、私の知らないヤナさんのことをたくさん知っている。
ヤナさんのとなりで微笑む彼女――堀恵里菜さんが扮するのは、スターリーグリーン。『星河戦隊ファイブスター』のスーツアクターで女性なのは、私と彼女だけだ。
ヤナさんと恵里菜さんは、同じアクション俳優専門の事務所に所属している同い年の同期だという。
でも私は、距離感の近さの理由がそれだけではないと思っている。
恵里菜さんを見ているとわかるのだ。彼女はきっと、ヤナさんに恋をしている。
みんなが『ヤナさん』と呼ぶなか彼女だけが『しゅうくん』と呼ぶのも、彼女がヤナさんを見つめる視線に甘やかなものが交じっているのも、他のメンバーにはしないボディタッチをヤナさんにだけはするのも。私の勘違いではない――ような気がする。
もちろん、恵里菜さん本人に確かめたことはないし、証拠もないけど、こういうのって同じ人を好きでいるなら伝わってくるものなのだ。
恵里菜さんは美人だし、細いのに出るところは出ていてスタイルがいい。性格も明るくてノリがいいから、タイプだという男性は多いだろう。
ヤナさんも、恵里菜さんのことを好きだったりするのかな。
というか、もうすでに付き合っていたりして?
……あぁ、だめだ。楽しい二次会の最中に、そんなこと考えたら暗い気分になってきてしまう。
「あ、ごめんね、ちょっと電話」
不安がぐるぐる頭を回っていると、恵里菜さんがスマホを手にして席を立った。
それからすぐ、いつの間にかテーブルに突っ伏しているつぼっちさんを、伊織くんが覗き込む。
「つぼっちさん。大丈夫ですか?」
「うーん……」
「ちょっと、顔色悪いですって。トイレ行きます?」
微かに頷くつぼっちさん。すると伊織くんが、つぼっちさんの肩を抱きかかえるようにして立ち上がる。
「すいません、ちょっと連れていってきます」
「ひとりで大丈夫?」
ヤナさんがすかさず声をかけると、伊織くんが頷く。
「はい。この人酒弱いから、慣れてます。……あーほら、ちゃんと歩いてください。支えてるんで」
伊織くんはぶつぶつ言いながらも、つぼっちさんを抱えてトイレへと向かった。
テーブルには私とヤナさんだけが残された形になる。