撫でて、触れて ~ヒーロースーツの彼に恋する気持ちが止まりません~
「でもわかるよ。あたしもすごく緊張してる」
「恵里菜さん、全然緊張して見えないです」
「そう? でも内心、心臓バクバク」
年上で芸歴も私より長い恵里菜さんはいつも落ち着いて見えたから、ちょっと意外だった。
小脇に抱えていたヘルメットを膝の上に置き、緑色のグローブをはめた手で左胸を押さえたりしている。
「こういうときは、緊張をもたらすものとは別のことで気を紛らわせるのがいちばんいいって、演出家の先生に聞いたことがあるんだ」
恵里菜さんはそう言ったあと、私を見上げてニッと笑った。
「みのりちゃん、しゅうくんのこと好きでしょ?」
不意打ちだったからすぐさま否定することができず、したり顔の恵里菜さんをただただ見つめていた。
「当たりみたいだね」
「あ、あのっ……どうしてそれを……?」
「あたしも同じだからわかるの」
――同じ。つまり、恵里菜さんもヤナさんのことを……?
思った通りだ。やっぱり、私の勘は間違ってなかった。
恵里菜さんはヤナさんのことが好きなんだ……。
驚きこそないものの、的中しないでほしい予感だったから、鉛を飲んだみたいにお腹の奥がずうんと重たくなる。
「しゅうくん、今彼女いないよ」
「……そうなんですか」
「あたし、立候補するつもり」
安堵した矢先、聞こえてきた言葉にぎくりとする。
「この番組の撮影が終わるのが一月でしょ。撮影が終わったタイミングで告白しようと思うんだ」
「恵里菜さん、全然緊張して見えないです」
「そう? でも内心、心臓バクバク」
年上で芸歴も私より長い恵里菜さんはいつも落ち着いて見えたから、ちょっと意外だった。
小脇に抱えていたヘルメットを膝の上に置き、緑色のグローブをはめた手で左胸を押さえたりしている。
「こういうときは、緊張をもたらすものとは別のことで気を紛らわせるのがいちばんいいって、演出家の先生に聞いたことがあるんだ」
恵里菜さんはそう言ったあと、私を見上げてニッと笑った。
「みのりちゃん、しゅうくんのこと好きでしょ?」
不意打ちだったからすぐさま否定することができず、したり顔の恵里菜さんをただただ見つめていた。
「当たりみたいだね」
「あ、あのっ……どうしてそれを……?」
「あたしも同じだからわかるの」
――同じ。つまり、恵里菜さんもヤナさんのことを……?
思った通りだ。やっぱり、私の勘は間違ってなかった。
恵里菜さんはヤナさんのことが好きなんだ……。
驚きこそないものの、的中しないでほしい予感だったから、鉛を飲んだみたいにお腹の奥がずうんと重たくなる。
「しゅうくん、今彼女いないよ」
「……そうなんですか」
「あたし、立候補するつもり」
安堵した矢先、聞こえてきた言葉にぎくりとする。
「この番組の撮影が終わるのが一月でしょ。撮影が終わったタイミングで告白しようと思うんだ」