撫でて、触れて ~ヒーロースーツの彼に恋する気持ちが止まりません~
「泣くほどよろこんでくれてるんだ」
ヤナさんはちょっとおどけて言うと、私の肩を抱いて互いの身体を正面に向き合わせる。
それから、外気で冷えた彼の中指が伸びてきて、頬にこぼれた涙を拭い取ってくれた。
「もしみのりちゃんも同じ気持ちでいてくれてるなら……俺と付き合ってください」
「……よろしくお願いします」
涙で少しぼやけたヤナさんを見つめながら、私はぺこりと頭を下げた。
嘘みたい。これって……これって、私がヤナさんの彼女になれたってこと……?
「あっ、あのっ、ひとつお願いがあるんですけど……」
慈しむような彼の眼差しを受けながら、私が言う。
「頭をぽんぽんってしてくれませんか?」
「頭?」
「前に何回か、そうやって撫でてくれたことがありましたよね。あの手がずっと忘れられなくて……ドキドキしちゃってました」
もし彼と気持ちが通じることがあったら、してほしかったこと。
ヤナさんの優しい手にいつでも触れてもらえるような存在になりたい。
ずっとそう願っていた。その夢が叶ったのだと、実感したかった。
「みのりちゃんが望むならいくらでも。お安い御用だよ」
囁くような声で快く答えてくれた彼の手のひらが、私の前髪に触れた。
ぽんぽんと、撫でるように触れる指先はやっぱり冷たいけれど、触れた場所から発熱するかのような甘やかなときめきが溢れ出して、思考を幸福で満たしていく。
――心に羽が生えて今にも飛んでいきそう。私、こんなに幸せでいいんだろうか……?
「うれしくて、ドキドキ止まらなくなっちゃいますね……」
「これだけで? ……じゃあこんなことしたら、どうなっちゃうかな」
ヤナさんは前髪に触れていた手をスライドして後頭部を支えると、反対の手で私の腰を抱いた。
そして優しく引き寄せて――唇を重ねた。
――!
えっ、今っ……何が起きてるの?
柔らかい感触と温もりを残して、彼の唇が遠ざかる。
……私、ヤナさんとキスしちゃった……?
「……や、ヤナさんっ……!」
「耳まで真っ赤」
どうしよう。すごく恥ずかしくて顔が熱い。
堪らず彼の名を呼んで詰ると、からかうみたいに笑われる。
「その反応、堪らなく可愛い。煽らないでよ。俺のほうがドキドキ止まんなくなって……帰したくなくなる」
「かっ……⁉」
――帰したくなくなるって、えっ……そういう意味?
さ、さすがにそれは早すぎるのでは……⁉
「冗談だよ。みのりちゃんは本当に可愛いね」
「もうっ、ヤナさん!」
もしかして面白がられてる?
普段は優しいのに実は意地悪というか、この人はちょっとSっぽい一面もあるのかもしれない。
……でも、そんな彼もいやじゃない。
というより、むしろもっといろんなヤナさんを知っていきたいと思う。
私の知らない彼を、全部知りたい。
彼は口を尖らせる私を見ておかしそう声を立てて笑いながら、そっと私の手を取った。
そして、いつになく真面目な表情で私を見つめた。
「みのりちゃん、これからもよろしく」
「やなさん……よろしくお願いします!」
私たちは手を重ねたまま、どちらからともなく微笑み合う。
――そういうわけで、戦隊スーツを脱いだヤナさんは、これからも私だけのヒーローになってくれることを誓ってくれたのだった。
ヤナさんはちょっとおどけて言うと、私の肩を抱いて互いの身体を正面に向き合わせる。
それから、外気で冷えた彼の中指が伸びてきて、頬にこぼれた涙を拭い取ってくれた。
「もしみのりちゃんも同じ気持ちでいてくれてるなら……俺と付き合ってください」
「……よろしくお願いします」
涙で少しぼやけたヤナさんを見つめながら、私はぺこりと頭を下げた。
嘘みたい。これって……これって、私がヤナさんの彼女になれたってこと……?
「あっ、あのっ、ひとつお願いがあるんですけど……」
慈しむような彼の眼差しを受けながら、私が言う。
「頭をぽんぽんってしてくれませんか?」
「頭?」
「前に何回か、そうやって撫でてくれたことがありましたよね。あの手がずっと忘れられなくて……ドキドキしちゃってました」
もし彼と気持ちが通じることがあったら、してほしかったこと。
ヤナさんの優しい手にいつでも触れてもらえるような存在になりたい。
ずっとそう願っていた。その夢が叶ったのだと、実感したかった。
「みのりちゃんが望むならいくらでも。お安い御用だよ」
囁くような声で快く答えてくれた彼の手のひらが、私の前髪に触れた。
ぽんぽんと、撫でるように触れる指先はやっぱり冷たいけれど、触れた場所から発熱するかのような甘やかなときめきが溢れ出して、思考を幸福で満たしていく。
――心に羽が生えて今にも飛んでいきそう。私、こんなに幸せでいいんだろうか……?
「うれしくて、ドキドキ止まらなくなっちゃいますね……」
「これだけで? ……じゃあこんなことしたら、どうなっちゃうかな」
ヤナさんは前髪に触れていた手をスライドして後頭部を支えると、反対の手で私の腰を抱いた。
そして優しく引き寄せて――唇を重ねた。
――!
えっ、今っ……何が起きてるの?
柔らかい感触と温もりを残して、彼の唇が遠ざかる。
……私、ヤナさんとキスしちゃった……?
「……や、ヤナさんっ……!」
「耳まで真っ赤」
どうしよう。すごく恥ずかしくて顔が熱い。
堪らず彼の名を呼んで詰ると、からかうみたいに笑われる。
「その反応、堪らなく可愛い。煽らないでよ。俺のほうがドキドキ止まんなくなって……帰したくなくなる」
「かっ……⁉」
――帰したくなくなるって、えっ……そういう意味?
さ、さすがにそれは早すぎるのでは……⁉
「冗談だよ。みのりちゃんは本当に可愛いね」
「もうっ、ヤナさん!」
もしかして面白がられてる?
普段は優しいのに実は意地悪というか、この人はちょっとSっぽい一面もあるのかもしれない。
……でも、そんな彼もいやじゃない。
というより、むしろもっといろんなヤナさんを知っていきたいと思う。
私の知らない彼を、全部知りたい。
彼は口を尖らせる私を見ておかしそう声を立てて笑いながら、そっと私の手を取った。
そして、いつになく真面目な表情で私を見つめた。
「みのりちゃん、これからもよろしく」
「やなさん……よろしくお願いします!」
私たちは手を重ねたまま、どちらからともなく微笑み合う。
――そういうわけで、戦隊スーツを脱いだヤナさんは、これからも私だけのヒーローになってくれることを誓ってくれたのだった。