例え私が消えたとしても俺は君の隣にいると誓う
「行こう」



支えられるように診察室へ向かう。

私、ひとりでも歩けるよ。

ただ、歩くのに時間がかかってしまうだけ。

だから支えてもらわなくて大丈夫だよ。


冬弥くんが診察室の扉をたたく。



「お入りください」



中から男の人の声が聞こえた。

静かに扉をスライドさせる冬弥くん。

診察室の中には白衣で身を包んだ30代くらいの男性がいた。


この人が精神科の先生……。

穏やかな雰囲気の人。

威圧感などは感じなかった。



「綾瀬さん、こんにちは」

「……」



診察室に置かれていた2つの椅子に私たちがそれぞれ座ると、先生が挨拶をしてくれる。

『こんにちは』と言われているんだから、返さなきゃいけないのにな。

でも、もう挨拶するタイミングも逃したからいいや。
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