例え私が消えたとしても俺は君の隣にいると誓う
いよいよ、クライマックス。

白雪姫が毒リンゴを食べて倒れてしまうシーン。

そんな白雪姫を助ける王子様。

眠っている美波ちゃんに冬弥くんがキスをするシーン。


キスをするかしないか。

そこで幕が下ろされる。

私は繋がっている湊くんの手を握りしめた。


……無意識だった。

冬弥くんが美波ちゃんにキスをする。

キスをしても、しなくても。

……見たくないと思ってしまった。


観客が美波ちゃんと冬弥くんがまとう空気に引き込まれていることが分かった。

実際に私も引き込まれてしまったから。

お似合いの2人だと思ってしまったから。


だから私は。

繋がっていた湊くんの手を離して逃げ出した。



「優奈ちゃんっ」



湊くんが私の名前を呼びながら追いかけてくれていることは背中越しに分かっていた。
< 56 / 287 >

この作品をシェア

pagetop