例え私が消えたとしても俺は君の隣にいると誓う
「と、冬弥くん……っ、」



思わず冬弥くんに抱きつく。

私の頭から冬弥くんの手が離れる。

冬弥くんの驚いている様子が、顔を見なくても分かる。


離れなくちゃいけないのに。

このままだと、冬弥くんを困らせてしまうのに。

だけど、離れたくないって思ってしまうのは。

冬弥くんの手が、私の背中を優しく撫でてくれているから……。



「優奈」

「……うん?」

「後夜祭に打ち上げ花火があるんだってさ」

「知ってるけど……」

「じゃあ、屋上で待ち合わせな?」



思いがけない言葉に思わず顔を上げる。


後夜祭……。

冬弥くんに誘ってもらえた……。


さっきまで帰ろうとしていた私だけど。

嫉妬でぐちゃぐちゃの感情だったけど。

涙も止まらなかったけど。

冬弥くんの一言で、笑顔になれた。



「うん、一緒に花火見る」



涙交じりの笑顔。

そんな私に冬弥くんは優しく微笑んでくれる。

あえてなにも聞かない優しさに救われた気がした。
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