短編集
それを思い出すと怒りがまた湧き出始めた。
「あの、―― 意気地なし!」
彼女が口内に蓄えられた肉を強めに噛む。
…… 分かってる。こんなこと考えたって意味がないのは。
が、すぐに歯の力を緩めた。
彼が立場上、私のことに意見できないのは
痛いほど知ってる。
だけど、だけど
少しでも主従以外の関係を望む態度をしてくれれば
私だってもっと――
「はぁ」
彼女が肩を落としてもう一度大きく溜めた息を吐く。