短編集
だけど、そうやって思っても不毛なことを悶々と考えていたある日
―― えっ、
彼女が突然スタイルを変えた。
服装はいつもよりカジュアルに。
髪はロングからバッサリとショートに。
いつも付けていた赤く輝く口紅をその日は付けていなかった。
率直に言うと似合っていた。
これは…… 話しかけるチャンスなのではないだろうか。
胸が少しだけいつもより高く鳴り始めた。
いや、でもいきなり見ず知らずの男に似合ってるね、なんて言われても……
そうやって色々と考えていると後ろから
「えっ、あの子可愛くね。今まで居たっけあんな子?」
そんな声が聞こえてきた。
まっ、まずい。このままじゃ
彼女に声を掛ける機会を失ってしまう。
焦った俺は意を決して彼女に話し掛けることにした。