短編集
―― と同時に
私の手が彼のほうに力強く引っ張られる。
「へっ?」
頭が真っ白になる。
そして私の手が彼の口元に吸い寄せられ“チュッ”と
生々しくも甘やかな音が私の手の甲に落ちる。
「か、駆さん!?」
驚きすぎて思わずさん付けになってしまう。
その様子を見ていたカップルが唖然としていた。
そうして彼は私の手から唇を離した後そのカップルに向かって舌を出し
「いいだろ」
と、呟く。
ポカンと口を開いたまま彼の言葉を聞くカップル2人組。
「じゃあ行こ」
「は!はい!!」
私と彼はそのまま手を繋いでその場から走って逃げた。