短編集
似合わない口紅








私は鏡の前に立つ。




身に纏うものは下着のみ。



手には真っ赤な口紅が1つ。



私は洗面台に手をつけて自分の唇にその手に持つ口紅を近付ける。



そのまま口紅を塗ろうとして、




やめた。




そして―― 鏡の中の私に口紅を塗る。




鏡の私の唇が赤く染まる。




私はそれを見て思わず呟く。




「似合わない」




と、





嘲笑とともに。



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