短編集
彼女の恋する視線を辿れば黒板の綺麗な文字がいつも映っていた。
それで気付くことができた。
彼女が好きなのは先生ではなく綺麗な文字なのだ、と。
確かに国語の先生の文字はすごく綺麗だった。
それなら俺がやることは1つだけだ。
文字を綺麗にすることで彼女の心を捉えれるのでは、と考えた俺は早速行動に移した。
そうして何ヵ月間と一年俺はひたすら綺麗な文字を書けるよう練習した。
何度も、何度も。
彼女に好かれるかもしれない、という不確定な要素ばかりの目標に向かって。