スイーツは甘いだけじゃない
警察が捜査したものの、誰がどこでケーキに毒を入れたのかはわからず、真実がわからないまま時間だけが過ぎていく。美緒は日に日に心も体も衰弱していった。

両親を失った後から、食べ物ーーー特に甘いものが食べられなくなったのだ。口に入れると吐いてしまう。更に夜は眠れず、涙がふとした時に零れ落ち、学校にまともに通えない状態だった。

「お父さん……お母さん……」

泣き続ける美緒に、渉はいつも授業が終わると真っ先に来て寄り添ってくれた。

「僕が、美緒をまた幸せに引っ張っていく。どんなに時間がかかってもいいから、未来を一緒に歩きたい」

渉はそう言い、花を持って来てくれたり、今日はこんなスイーツを作ったと話してくれたり、毎日美緒に明るい話をしてくれた。そのおかげで美緒は少しずつ、歩き出すことができるようになっていく。

「これ、美緒のお母さんのレシピが書かれたノートにあったやつだよ。作ってみた」

美緒が中学生になった頃、渉が母親が時々作ってくれたオレンジがたくさん使われたケーキを持って来てくれた。
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