溺愛の檻から、逃げられない
実際、彼はほんの数分で帰って来た。
漫画の中でしか見たことなのない可愛いワゴンをひきながら。その上には紅茶やらマカロンなんかが乗っていて、いわゆる"アフタヌーンティー"。
この異常な状態で彼はお嬢様気分でも味わえというのか。
「やっぱりおかしくなったんだ…」
「ん?」
「いや、なんでもないです。」
なんなら少しるんるんな彼をジト目で見ながらハアとため息が漏れた。もう色々よく分からないや。
彼はベッドのそばの白くて少し小さめなテーブルまでよると、ワゴンの上のものを着々と載せていく。
んー、見てたらお腹すいてきたかも。
「そうだった。鎖を長くしないとね。」
パチンと彼が指を鳴らすと、じゃらりと音がした。
「なに…?」
鎖?ながく?
どこかぼんやりとしながら腕を伸ばすとあら不思議なことに。手をぶらぶらと動かせる。
これなら起き上がれる!
上体を起こして、蒼さんの方を見ると今度は蒼さんがジト目でこちらを見ていた。
「な、なにか?」
「いや別に。……それより食べなよ。」
ちょうどよく、私のお腹からぐうっと音がなる。あれ、私っていつからご飯たべてないんだろう。
まあ、良いか。白いテーブルにあるのはマカロンにチョコレートケーキ…なんか可愛いミニケーキ…
「……じゃあ遠慮なく。」
何から食べよう。やっぱりここはマカロン?
そうして私が獲物に手を伸ばしたときだった。