溺愛の檻から、逃げられない
「いだっ、」
痛ったい…なに?
急にグギッと手首を引きつけられて、跳ね返るような体勢になる。
「くくっ……」
ちょっと蒼、笑わないで。
「……鎖の長さ足りない。」
根本的に足りない。短いんだけど。
私の動きを妨げたのは、この忌まわしい鎖だった。
「うぐぐ…」
もう一度手を伸ばしてみるけど、白いテーブルとマカロンにはあと数センチ足りない。
あともうちょっとなのに!
そうしていつまで必死に手を伸ばしていただろうか。手はもうビリビリと痺れてしまって、お腹がなってしまう。
どうせ長くするなら届く長さにしてよ!
そんな思いで優雅にお茶なんて飲む彼を睨む。
「しょうがない。食べさせてあげるよ。」
この人…最初からこれが目的だったでしょ…
私がこれほど手首を赤くしてまでして取ろうとしたものを、彼はいとも簡単に掴んだ。
「ほら。口、開けて。」
なんだかすごく恥ずかしいことをしている気がする。
口元まで持ってこられたマカロンと彼の顔を見比べる。
もういいや…食べちゃえ。
「どう?美味し?」
「ん、うん…」
咀嚼するたび甘い味が口いっぱいに広がる。
こんなに美味しいマカロン食べたことない…
高級マカロンかも。