溺愛の檻から、逃げられない
「おい!お前!!
若に何してんだよ!」
突然の大きな声にびくりと肩が震えた。
やっぱり。
やっぱり私は龍夏に連れ去られたんだ。
そして今怒鳴った人は多分この人を"若頭"と言った。
じゃあ、この人が若頭…?
美月と揉めた冬華の…。
どうして、重症のはずなんじゃ!
見たところ、彼は無傷。
可能性があるとしたらスーツの下に傷があるとかぐらい。
きっと睨みつけ、周りを見渡す。
龍夏ごときに屈していられない。
目の前の彼が少し離れたことで
周りが見えたが、見えない方がよかったかもしれない。
畳、木の柱という和風的な物が目に映ると同時に、
何人いるだろうか…、
スーツ姿のがたいの良い男性がたくさんいる。
今、私を怒鳴ったのもそのうちの1人だろう。
私は目の前の彼の方に視線を戻した。
彼は私に振り払われた手を何も言わずに見ている。
細くて綺麗な手が少しだけ赤くなっていた。