溺愛の檻から、逃げられない



「ねぇ、清田からのキスはどうだった?」


「せ、清田さん……」


いきなり出てきた彼の名前に、そんな事なんて考えられる状況じゃないでしょ!

なんてつっこめるわけもなく、迫り来る彼の唇を押さえるだけで精一杯だった。



「…ねえ、答えて?」


「ひゃあっ…」


押さえていた私の手を取り、ペロリと肉食動物のように舐めた。

「甘い」と呟く彼は色っぽくて困る。



「あれは突然彼にされたの。私からじゃない。ほんとに。信じてよ。」


「ふーん…」


どうしよう…


射抜かれるような彼の深い眼からは逃れられるはずもなくて、必死に紡ぎ出た言葉はどうも薄っぺらい。



「それじゃあ、」


力なんてすっかり抜けた私の手をやっと剥がして、手首にも口付けてほっぺにもキスを落としながら歌うように言った。


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