溺愛の檻から、逃げられない
どうしよう……。
逃げられない。
心臓が口から飛び出るほどバクバクと音を立てている。
睨みつけるとはいえ、私は今にも泣き出しそうだった。
目の前の彼はずっと自分の手を見ていたが
静かに口を開いた。
「ちょっと、どっか行って。
彼女が怖がってるでしょ。
ほら、行った行った。」
私に背を向けて、後ろの男の人達に手で追い払うようなジェスチャーをする。
男の人達は何か言いたげだったが、この人が若だからだろうか。
何も言わずに襖を開けて出て行った。