溺愛の檻から、逃げられない
この世界には二種類の人間がいる。
身体能力が高くて、不思議な力を持つ冬華という人間と、私や妹のようにそうでない一般人。
その力の格差により、昔は冬華による窃盗や暴行が多発したらしい。
そこで、犯罪を起こした冬華を取り締まるのが"冬狼"という組織だ。
やっていることは正義だといえども、元はヤクザだったとか実は喧嘩賭博で儲けているやらという悪い噂が絶えない。
その冬狼に妹の美月(みずき)は捕まったのだという。
私は頭が真っ白になりながらも必死に言葉を紡いだ。
「一体…どうして?」
「いやあ。なにしろ、冬華の男に浮気がばれて、逆切れ?して相手を殴ったらしい。
んで、冬華の男がキレて…なんつうの…
こう……乱闘になったんだと。」
額にできた赤いニキビを触りながらぽつぽつと答えた。