溺愛の檻から、逃げられない

「なに逃げようとしてるの。」


腰と背中に両腕を回されて、ホールドされる。

これで私は完全に逃げられなくなってしまった…。


  

何でいきなりこんなこと…。

ほんとうに彼が何を考えているか分からない…。

近いし…恥ずかしいし…。



ていうか何で何も言わないの…?



「な、なんですか?」


手を回したきり、何も発さなくなった彼を伺うように見上げるように見る。

私が見てきたことに驚いたのか。

一瞬びっくりしたように綺麗で真っ黒な目を見開くと、

私に回していた手を離し、自分の顔を覆った。




「……君さあ……ほんとに……。」


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