溺愛の檻から、逃げられない
その重みの正体は蒼さんから伸びる手だとすぐに気づいた。
「ちょっと出てくるから。」
「何時ぐらいに…帰ってきますか?」
「うーん。20時とか22時ぐらいかな。」
シャツを取りながら答えてくる。
どこが"ちょと"なのか全く分からない。
「そう…なんですか。」
「何?さびしい??」
揶揄われるのも少し慣れてきたかも。
「いや…全然。」
寂しいわけではない。
ただ、私って何してればいいのかな。
スマホも持ってないし。
「じゃあ行ってくるから。」
昨日のように再び、和服に身を包んだ彼はその手を襖にかけた。
今日も始まるのか。
ぼけっと天井を見上げる。