溺愛の檻から、逃げられない
「それじゃあセイ。見張りよろしく頼むよ。あの龍夏の若頭より強いかもしれない女だから気を抜かないように。」
「承知しました。」
セイと呼ばれたスーツ姿の顔立ちの良い男は表情もぴくりとも動かさないで機械のように答える。
反対に、襖に手をかけた蒼はこちらに一度振り向いてどことなく楽しそうに言う。
「それじゃあ、美月さん。拘束は事が終わり次第外せないけど何かあったらセイに言って。」
「……はい蒼さん、いやーーさん。」
さて、彼はどんな顔をしてくれたろうか。
楽しそうな彼への小さな仕返し。
彼は振り向かずいってしまって、その顔は拝めなかった。