町空くんは無自覚な闇
「じゃあ僕はこれで……藍原さん、気をつけて帰ってね」
「え、町空くん……?どこ行くの?」
町空くんはさらっと別れの挨拶をしたかと思うと、背中を向けて来た道を戻ろうとしていた。
つい呼び止めてしまったけれど……私には関係のないことなのに。
なんだかモヤモヤする。
「少しやりたいことがあって」
いまの町空くんは変だ。
いつもはこんなに話さないし、人の目を見ようとしない。
俯き加減だったはずの町空くんは、今は私を見て……笑っている。
怖い、と思わずにはいられない。
ゾクッとするこの感覚は、先ほど準備室で感じたものと同じだ。
町空くんは行ってしまう。
私に背中を向けて、日が落ちかけている薄暗い道を歩いていった。
「……帰ろう」
なに気にしてるんだ。
私は周りから気にされる人間なのに。
意識される側の私が、なに町空くんを意識してしまっているの。