町空くんは無自覚な闇


「藍原さんは僕の憧れなんだ。あの日からずっと、ずっと……それで、やっと自分のやりたいことがわかったんだ。僕は藍原さんのために生きたい、この力を使いたい」


 まるで闇を映しているかのような、その瞳に吸い込まれそうな感覚。
 ああ、もう止められない。


「藍原さんが光なら僕は影だ、藍原さんの存在を強調させるための影。でも僕はまだ全然影の役割を果たせていない……綺麗で美しい藍原さんも、笑うと可愛い藍原さんも素敵だ。だけど僕を助けてくれたときのように、かっこいい藍原さんも素敵なんだ……だから僕は決めたんだ。光を制する藍原さんは、闇をも制する力があるって。いや、制するべきなんだ」


 気づけばひと気のない、まだ外は明るいはずなのに、薄暗い場所に来ていた。
 廃れたビルの前で町空くんは立ち止まる。


「だからこれは、その第一歩なんだよ」

 町空くんは笑った。
 ゾクッとするほど、全身が震えるほどの綺麗で危ない笑みだった。

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