町空くんは無自覚な闇
そりゃ例外もあると思うけれど、そもそも町空くんは私のほうを一切見ようとしてこないし。
なんなら俯いていて表情がわからない。
「あ、あの……!」
準備室に到着したとき、ようやく町空くんが口を開いた。
緊張のせいか、声がうわずっている。
「なに?」
「僕が……僕がやるから藍原さんは帰って大丈夫です……!」
「はい?」
町空くんは頬を赤らめ、恥ずかしそうに話し始めた。
それも、自分が全てやると言ってきたのだ。
「なに言ってるの、ふたりでやったほうが早いじゃない。ほら、早くやるよ」
ここで町空くんひとりに任せたら、押し付けたと思われかねない。
私はそんな卑怯な真似はしたくないから、帰らずに準備室の中に入る。
準備室は思ったより整理されているが、ところどころ埃っぽい。