町空くんは無自覚な闇


「じゃあ怠け者の……先生は、あの……許すって、ことかな」

「やっぱり私の話、聞いてたんだ。ちゃんと反応してよね」

「す、すみません……!」

「謝らなくていいよ。許すも何も、そこまで恨んでいるわけじゃないし。先生が忙しいってのもわかるからね」

 担任の仕事もあるのだ、忙しくて当然だ。
 怠け者と言ったのは、自分を指名した先生への文句である。

 本気で思っているわけではない。


「そっか……」
「それよりも町空くんってちゃんと話せるんだ」

 いつも謝っているところしか見たことがないため、ちゃんと話すことを知らなかった。


「……名前」
「え?」

「い、いま……僕のこと」
「おーっ、すまんなふたりとも。掃除を頼んで」


 町空くんがどこか興奮した様子で口を開いたが、準備室にやってきた先生の声でかき消される。

 気のせいかな……前髪の隙間から見える瞳は私を捉えているような感じがして、思わずゾクッとした。

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