イケメン、お届けします。【注】返品不可
「さっさとシャワーして来い。時間の無駄だ」
命令されてむっとしたが、もしかしたらこれは夢かもしれないと思い直した。
昨夜は相当飲んだし、未だ夢の中でもおかしくない。
熱いシャワーを浴びて目が覚めれば、部屋には誰もいなかった……というオチかもしれない。
「では、遠慮なく……」
とりあえずシャワーを浴び、頭も身体もすっきりして洗面所兼脱衣所へ一歩足を踏み出し、ぎょっとした。
「ずいぶん早いな。ちゃんと洗ったのか?」
ドーベルマン……もといイケメンの「お届けもの」が、眉根を寄せてこちらを睨んでいる。
全裸の女性を目の前にしているとは思えぬ冷静な態度に、こちらも隠すのを忘れてしまう。
「……な、んでいるの?」
「歯を磨いていたからだ。健康的な老後を送るためにも、歯は大事だ」
(それはごもっともだけど……いったい、どこから歯ブラシを調達したのか気になる。気になるけど、まずは……)
「で、出てってくれません?」
「なぜだ?」
「な、ぜって……バスタオルがそこにあるからです」
肌ざわりがお気に入りの大判バスタオルも着替えも、目の前にそびえる彼の向こう側に置いてある。
「ん? これか」
振り返ってバスタオルの存在を確かめ、手に取った彼は何を思ったのがこちらへ一歩踏み出した。
「えっ」
慌てて距離を取ろうと後退りした身体に、バスタオルと逞しい腕が同時に巻き付く。
しかも、彼は意外すぎる感想まで述べる。
「思ったよりも……柔らかくて抱き心地がいいな」
「は?」
警戒心と恐怖心に震え、怯えながら見上げた途端、柔らかいものが唇に押し当てられた。
「ふっ……うっ」
逆らう間もなく入り込んできた舌に、先ほどとはちがう意味で震える。
どうしてこんなことをされているのか、混乱した頭ではまったく理解できない。
理解できるのは、彼がつけている香水はムスク系で、歯磨き粉はミント味ということだけだ。
そして……。
(キス、巧い……)
獰猛な見た目と雰囲気に反し、彼のキスはとても優しく、あまりにも気持ちよい。
抵抗するどころか、ついつい応えてしまう。
このまま溶けてしまいそうだと思ったところで、唇が離れた。
「反応も悪くないな」
「…………」
「さっさと着替えろ。あかり」
命令されてむっとしたが、もしかしたらこれは夢かもしれないと思い直した。
昨夜は相当飲んだし、未だ夢の中でもおかしくない。
熱いシャワーを浴びて目が覚めれば、部屋には誰もいなかった……というオチかもしれない。
「では、遠慮なく……」
とりあえずシャワーを浴び、頭も身体もすっきりして洗面所兼脱衣所へ一歩足を踏み出し、ぎょっとした。
「ずいぶん早いな。ちゃんと洗ったのか?」
ドーベルマン……もといイケメンの「お届けもの」が、眉根を寄せてこちらを睨んでいる。
全裸の女性を目の前にしているとは思えぬ冷静な態度に、こちらも隠すのを忘れてしまう。
「……な、んでいるの?」
「歯を磨いていたからだ。健康的な老後を送るためにも、歯は大事だ」
(それはごもっともだけど……いったい、どこから歯ブラシを調達したのか気になる。気になるけど、まずは……)
「で、出てってくれません?」
「なぜだ?」
「な、ぜって……バスタオルがそこにあるからです」
肌ざわりがお気に入りの大判バスタオルも着替えも、目の前にそびえる彼の向こう側に置いてある。
「ん? これか」
振り返ってバスタオルの存在を確かめ、手に取った彼は何を思ったのがこちらへ一歩踏み出した。
「えっ」
慌てて距離を取ろうと後退りした身体に、バスタオルと逞しい腕が同時に巻き付く。
しかも、彼は意外すぎる感想まで述べる。
「思ったよりも……柔らかくて抱き心地がいいな」
「は?」
警戒心と恐怖心に震え、怯えながら見上げた途端、柔らかいものが唇に押し当てられた。
「ふっ……うっ」
逆らう間もなく入り込んできた舌に、先ほどとはちがう意味で震える。
どうしてこんなことをされているのか、混乱した頭ではまったく理解できない。
理解できるのは、彼がつけている香水はムスク系で、歯磨き粉はミント味ということだけだ。
そして……。
(キス、巧い……)
獰猛な見た目と雰囲気に反し、彼のキスはとても優しく、あまりにも気持ちよい。
抵抗するどころか、ついつい応えてしまう。
このまま溶けてしまいそうだと思ったところで、唇が離れた。
「反応も悪くないな」
「…………」
「さっさと着替えろ。あかり」