イケメン、お届けします。【注】返品不可
理想のデート
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約四時間後――。
あまりの気持ちよさに熟睡し、マッサージ中の二時間分の記憶がほとんどなかった。
身体が軽くなったところで移動した美容室では、肩まである髪を少し整えられ、あちこち巻かれた上でハーフアップにされた。
その後メイクにより、普段の一・五倍の目力と艶肌を手に入れた。
オオカミさんから届けられたという品のいいベージュのセットアップに着替え、超高級ブランドのパンプスを履いて、変身は完成。
スカート丈はひざ下。トップスもハイネックのニットでほとんど露出がないものの、身体の線がキレイに見える。
彼の気に入るかどうかはわからないが、自分でも悪くないと思う出来栄えだ。
支払いはいらないと言われ、なんとなく後ろめたさを覚えつつ一階まで下りる。
(それにしても……何もしなくても、どうしてお腹って空くの……)
ランチに何を食べようか、ということを考えるのに夢中で、いきなり前方に立ちはだかった黒い壁にぶつかりそうになった。
「きゃっ」
びっくりしてよろめいたわたしの腕を掴んで支えたのは、やや不機嫌そうなオオカミさんだ。
「俺を無視して、どこへ行く気だ?」
「あ。オオカミさん。いたんですね?」
「とりあえず、多少は見られるようになったな。服も似合っている」
いちいち癇に障るが、彼が手配してくれたおかげで、気持ちのいい時間を過ごせたのは事実だ。一応、お礼を言っておくべきだろう。
「ありがとうございます」
「礼はいらない。俺が気に入らなかっただけだ」
(だ・か・ら! なんでそう余計なことを……深呼吸。深呼吸よ! 怒りを治めるのに効果的なはず……そうそう、ゆっくりと吐く……長く、細く麺のように……)
「昼は、何が食べたい?」