イケメン、お届けします。【注】返品不可
「えらいですねぇ。わたしは、できないとすぐに諦めちゃう」
「そうか? 好きなものには一生懸命取り組んでいるだろう。バスルームや洗面所のリフォームは、あかりが自分でやったんだろう? 使い勝手もいいし、ミラーや棚も上手く廃材を利用して洒落た雰囲気になっていて感心した」
「え」
どうしてわかったのだと驚くわたしに、オオカミさんは肩を竦める。
「インテリアが好きで、企画や制作に携わりたくていまの会社に就職したとルミから聞いた。それなのに、人事部にいるとも。異動希望は出さないのか?」
当然の質問だったが、胸がズキリと痛んだ。
**
大工だった祖父の影響もあり、わたしは小さい頃からいろんなものを自分で作るのが好きだった。
年を追うごとに、手掛けるものは大きくなり、いまでは家具だけでなく、ちょっとしたリフォームも自分でこなす。
ちなみに、現在の住まいである2LDKの安アパートには、もともと洗面所はなく脱衣所もなかった。
いまある洗面所兼脱衣所兼洗濯機置き場は、わたしが作ったものだ。
勤め先である大手家具メーカー『KOKONOE』に就職したのも、家具やインテリアのデザイン、もしくは企画や販売戦略などに携わるチャンスがあるかもしれないと考えたからだった。
『KOKONOE』は、年に二回の人事異動があり、各部署で空席となるポストが公表され、社員自ら異動を願い出ることができるようになっている。
部署を跨いでのプロジェクトで、参加者を募ることもある。
いつかチャンスを掴めるかもしれないと思ったのだ。
けれど、そんな希望や期待は、三か月の新人研修後に人事部に配属され、ひと月と経たずに潰えた。
人事部は、全社員のデータを取り扱うのはもちろんのこと、採用に必要な情報――どの部署が、どんな人材を必要としているのか、といったことも把握している。
『KOKONOE』の中枢、企画デザイン室には、常に世界中から選りすぐりの人材が集められており、ヘッドハンティングで、有能なディレクターや人気デザイナーを引き抜くのも日常茶飯事。
独学で、単なる趣味として家具づくりや部屋づくりをしている一社員なんて、最初からお呼びではなかった。
趣味は趣味のまま、続ければいい。
そう自分を納得させ、四年が過ぎていた。
「そうか? 好きなものには一生懸命取り組んでいるだろう。バスルームや洗面所のリフォームは、あかりが自分でやったんだろう? 使い勝手もいいし、ミラーや棚も上手く廃材を利用して洒落た雰囲気になっていて感心した」
「え」
どうしてわかったのだと驚くわたしに、オオカミさんは肩を竦める。
「インテリアが好きで、企画や制作に携わりたくていまの会社に就職したとルミから聞いた。それなのに、人事部にいるとも。異動希望は出さないのか?」
当然の質問だったが、胸がズキリと痛んだ。
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大工だった祖父の影響もあり、わたしは小さい頃からいろんなものを自分で作るのが好きだった。
年を追うごとに、手掛けるものは大きくなり、いまでは家具だけでなく、ちょっとしたリフォームも自分でこなす。
ちなみに、現在の住まいである2LDKの安アパートには、もともと洗面所はなく脱衣所もなかった。
いまある洗面所兼脱衣所兼洗濯機置き場は、わたしが作ったものだ。
勤め先である大手家具メーカー『KOKONOE』に就職したのも、家具やインテリアのデザイン、もしくは企画や販売戦略などに携わるチャンスがあるかもしれないと考えたからだった。
『KOKONOE』は、年に二回の人事異動があり、各部署で空席となるポストが公表され、社員自ら異動を願い出ることができるようになっている。
部署を跨いでのプロジェクトで、参加者を募ることもある。
いつかチャンスを掴めるかもしれないと思ったのだ。
けれど、そんな希望や期待は、三か月の新人研修後に人事部に配属され、ひと月と経たずに潰えた。
人事部は、全社員のデータを取り扱うのはもちろんのこと、採用に必要な情報――どの部署が、どんな人材を必要としているのか、といったことも把握している。
『KOKONOE』の中枢、企画デザイン室には、常に世界中から選りすぐりの人材が集められており、ヘッドハンティングで、有能なディレクターや人気デザイナーを引き抜くのも日常茶飯事。
独学で、単なる趣味として家具づくりや部屋づくりをしている一社員なんて、最初からお呼びではなかった。
趣味は趣味のまま、続ければいい。
そう自分を納得させ、四年が過ぎていた。