イケメン、お届けします。【注】返品不可
「は? いや、結構ですから」
誕生日プレゼントにしては大物すぎるし、オオカミさんからプレゼントを貰うつもりもない。
「自分で作るつもりだからか?」
「いえ。ソファーはちょっと手がかかるので」
「だったら、買えばいいだろう?」
「オオカミさん。ルミさんには、今日一日わたしに付き合えと言われただけでしょう?」
「誕生日プレゼントは欲しくないのか?」
「欲しいですけど、エステとかゴハンを奢ってもらっただけでも、十分すぎます」
失恋するたびに、元カレたちとの思い出の品を捨ててきた。
吹っ切るためには必要な儀式だけれど、自分の恋心も捨てるような気がして、辛かった。
だから、記念の品や思い出の品は買ったり作ったりしないように、無意識に避けるようになった。
写真すらも、だ。
オオカミさんとは、今日一日の付き合い。
それなのに、何か形に残るものを買ってもらったりすれば、思い出さずにはいられないだろう。
何も貰わなくたって彼のことを一日や二日で忘れられる気がしないのだから……。
「俺があかりに何かプレゼントしたいと言っても?」
「物を貰うより、気持ちを貰う方が嬉しいです」
「……そうか」
オオカミさんは不服そうではあるが、大きく頷いた。
納得してくれたようだとホッとしたところ、わたしを覗き込み、いきなりキスをする。
一瞬のことで、避ける間もなかった。
しかも、茫然とするわたしをぎゅっと抱きしめる。
「あの……何してるんですか?」
「気持ちを表すには、目に見える行動を取る必要がある。女性は、こまめなスキンシップが好きだろう?」
「いや、でも、ここで、いま、する必要ないですよね?」
「挑戦したいと思った時が、やり時だ」
「……何に挑戦してるんですか」
「あかりだ」
「わたしは、ラスボスか何かですか?」
「ある意味そうかもしれないな。押し倒したいし」
「だからっ! こんなところでする会話じゃないでしょうっ!?」
遠巻きにこちらの様子を窺うほかの客や、対応方法を考えあぐねて身動きできずにいる店員の視線が痛い。
営業妨害と言われてもおかしくない。
「と、とにかく……次の店へ行きたいので、離れてください」
「本当に、このソファーはいらないのか?」
「じっくり検討する派なんです」