イケメン、お届けします。【注】返品不可
「あまり考えすぎても決められなくなるぞ?」

「衝動的に決めるよりマシですっ!」


オオカミさんを押しやり、ソファーから立ち上がって、「お騒がせしてすみません」の会釈を店員へ送り、店を出る。

イチャイチャするのは、嫌いではない。
本物の恋人同士なら、思わずとか、自然と、ということはあるだろう。

でも、わたしたちは期間限定のニセモノだ。


(大体、女性はこまめなスキンシップが好きって……誰を基準にしてるわけ!?)


怒りに任せて足早に通路をずんずんと進み、キャラクターグッズを扱う店の前まで来た時、ひとりの男の子が店から駆け出して来た。

半べそ状態で切羽詰まった様子で辺りをキョロキョロ見回している。

どうやら、迷子のようだ。


「ねえ、ぼく……」


立ち止まり、声を掛けようとしたところ、男の子がぱぁっと顔を輝かせた。


「パパーっ!」


父親が見つかったのか、とほっとして振り返り、目を見開く。

男の子が駆け寄り、足にしがみついた相手は……なんと、オオカミさんだ。


「パパ……?」

「…………」

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